ホウ素中性子捕獲療法(Boron Neutron Capture Therapy : BNCT)は,ホウ素中性子捕捉反応から生じる粒子線を利用する粒子線治療であり,癌組織に集積 したホウ素と熱中性子との核反応で生じる高 LET 放射線により癌細胞を選択的 に破壊することが可能で,放射線低感受性の固形癌にも高い抗腫瘍効果が期待で きる.近年中性子発生源として BNCT 専用加速器の開発が進み,本邦を筆頭に 世界各国で病院併設型 BNCT 用加速器の開発,導入が始まっており,今後の発 展が期待されている治療の一つである.
2018 年に本学に設置された住友重機械工業の BNCT 用加速器(BNCT 治療シ ステム NeuCure TM )が 2020 年3月に世界で初めて医療機器として承認され,同年 6月から頭頸部癌に対して保険診療での治療が開始された.当センターでは 2022 年3月までに約 60 例の頭頸部癌に対して BNCT 治療を行っており,今回われわ れは,BNCT 適応症例の比率と自研例の治療効果,および今後の BNCT につい て検討を行ったので報告する.
キーワード : ホウ素中性子捕捉療法,BNCT 用加速器,中性子,ホウ素化合物,保険診療